言葉を探せど見つからない

 
「なあスバル、オレって薄情かなあ」
「――は?」
 
タイミングだけでなく内容も唐突なアクロの言葉に、スバルは眉をひそめた。まったくいつもいつでも理解に苦しむ人間だ、考えていることも行動も全く読めない。全てを説明されても判らないのに部分だけ言うのは止めて欲しいと考えながら、いぶかしむように目を細めて視線を返すと、アクロは珍しく目をそらして頭を掻いた。
 
「バクに仲間の復讐かって聞かれてさ。そういうのに興味ないオレは薄情なのかなあって思って――」
「……」
 
一瞬、返す言葉に迷う。彼が青天の都の生き残りであるらしいことも、彼の故郷が滅んだことにアートが協会は関わっているらしいことも知っている。だからバクという奴がその言葉を発した理由は判らないでもない。
しかし、普段は騒々しいくらい覇気のある彼が珍しくしおらしかったから、一体どう返答すべきか判断に迷った。頭の普段使わない部分を回転させてもみたけれど、結局スバルにはいつも通りの憎まれ口しか思いつかない。
 
 
「意外だな、お前みたいなバカでも他人の言葉を気にすることもあるのか」
「なっ――喧嘩売ってんのかよ!」
 
 
無表情でそう言えば、アクロがすぐ眉を吊り上げて、普段通りのペースにスバルは少しホッとした――もちろんそれを顔に出しはしなかったけれど。彼がこうでないと自分も調子が狂う。一つ息を吐いて、スバルは目を伏せた。
 
「復讐なんてのは、そうすることしかできない奴が自分のためにするもんだろう」
 
そんなことも分からないのかと悪態をつき、(こんな言い方がしたいわけではないのに)と心の端で考える。長らく他人との関わりを断ってきたせいか、こういう時の気の使い方がスバルには解らないのだ。
 
 
「……そっか、そうだよな。さんきゅ、スバル」
 
 
けれどアクロが笑ってくれたから、まあいいかと思うことにした。伝わったのならそれでいい。安心したと同時に恥ずかしさでたまらなくなってきて、スバルはアクロに背を向けた。アクロが背後でにやついた笑みを浮かべているような気配がしたが、気付かないふりをして黙殺する。
 
(――そういえば、こいつは)
 
彼は青天の都の人間だったなと考える。一族が滅んで、“独り”なのだと。もう7年も前から、ずっと。それがどういう事なのか、スバルには実感としてはまるでわからない。共に暮らしていた人間たちを一気に失うというのは、一人だけで生きるというのは、どんな気持ちがするものなのだろう。
 
 
「……寂しいか?」
 
 
考えていたらつい疑問が口をついて出た。我ながら唐突な質問だったと思うが、意図を理解してくれたのか「いいや」という答えがすぐに返ってきた。
 
「じいちゃんがいたし――それに今は、お前らがいるもん」
 
アクロが笑って本音の形の言霊を吐いたので、そうかとスバルは微笑した。
 
 
 
 
 
 
2010.1.6 // ……それなら、
 
 
 
 
 
 
 
 
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6巻読む前に書いてるので、間違い等あったら直しに来ます。
アクロとじいちゃんの回を本誌で読んだことがある…ような気がするんだけどどうだっけ…