またいつか皆で会おう。
そう約束したのは、もう遠い日。
記憶はまだ鮮明でつい昨日のことのようだけれど、時間は確かに過ぎていた。
戻ることのない時間は思い出となり、記憶の中にのみ共に歩いた道が色濃く浮かび上がる。
今は、もう。
歩くのは、それぞれの道。
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「でもびっくりだよね、まさか皆揃うとは思わなかったもん」
ジュエルが嬉しそうにカップを下ろした。その姿は焚き火の光に照らされて仲間達の目に映る。
月の光がわずかに闇に落ちる夜、火を囲むのはかつて共に戦った友。
「でも、皆さんお元気そうで安心しました」
「だな。全然変わってないんだか、変わったんだか」
ポーラが言って、ケネスが応じる。それをタルが横からからかうようにつついた。
「お前は立派になったじゃねーか、副団長さん?」
「……それはもういい」
苦笑するケネスに、周りは皆小さく笑った。こうしてこのメンバーで言葉を交わすのはとても懐かしい。すぐに昔の記憶を呼び覚まし、つい昨日もそうして笑っていたような錯覚さえ覚えた。
「――水をとってくる」
皆のカップの中身が空なのに気付いてカインは立ち上がったが、横からのびた手に腕をつかまれる。
「いいよ、僕が取ってくる」
ケネスやポーラあたりが言ったのなら何とも思わなかっただろうけれど、スノウが立ち上がったのでカインは思わず目をしばたいた。
「いつまでも君にばかりさせては悪いよ。これくらいやらせて」
苦笑気味に言い置いて、キャンプの方に歩いていってしまう。
カインはスノウの後ろ姿を追い掛けようとしたが、ケネスに止められて再び腰を下ろした。
昔の癖はなかなか抜けないというがその通りらしく、スノウに行かせているのが何となく落ち着かない。
「一番変わってないのはカインだと思ったけど」
「だよな、すぐ自分が動こうとするところとか」
「一番変わったのはスノウですね……」
「まあ、いろいろあったからな……」
全員一様に息を吐き、彼が向かった方向を見つめた。
時間と経験は人を変える。
一番変わったと思うのはもちろんスノウだけれど、他の4人も記憶の姿とは少しずつ違っていた。
顔つきは子供から大人のそれへと変わりつつあり、言葉も少し落ち着いたように思う。
昔と同じように話していても、全く同じには決してなれない。
当たり前のことだけれど、少し淋しい。
そうして幼さを道の途中に置いていくことが大人になるということなのかもしれなかった。
自分は時間から取り残されてしまったから、もう姿が変わることはないけれど。
「今度の戦いが終わっても、また皆で集まれたらいいね」
ジュエルが言って、タルが苦笑を返した。
「集まるところが戦いの場ってのは勘弁願いたいけどな」
「違いない」
笑い声は夜にとけて消えていく。こうして話した時間もすぐに決して手の届かない思い出へと変わっていくのだ。
進むのは、それぞれの道。
選ぶのは、それぞれの未来。
少し寂しさに胸が疼こうと、それは祝福すべきこと。
生きていればまたいつか道が交わることもあるだろう。
今はただ、重なったこの戦いの道を行こう。
talk
元ガイエン騎士団4人組+4主+スノウが好きです! 流刑イベントはときめきました。そのときの感動が強すぎて、ついてきてくれたタルとジュエルはラスボスまでパーティから外しませんでした。
2005.10.13