今日はどうしたと尋ねたラスに、これといって用があるわけじゃないんだけどね、とアトリは小さく笑んだ。
アトリに用がないなんて珍しい――いや、初めてではないだろうか? 彼がこの世界を訪れるときは何かしら話か渡すものがあるときで、ただ時間をつぶしになんて今までなかった。自分が忘れているだけだという可能性もあるけれど、おそらくない。アトリが訪ねて来た日のことだけは、なぜかは分からないが、全てはっきり覚えているのだから。
不思議に思ってアトリを見る。別段何かあったようでもないし、これといった違和感はない。
用もなく遊びに来てはいけないわけではない。
むしろいつでも来て欲しい。
けど、何だろう。
「どうかした?」
アトリが言った。
「いや……」
ラスは答えた。
――ああ、そっか。
休みに来たんだ、とラスは思った。根拠なんてないけれど、理由なんてないけれど、ただ直感的に、ラスはそう思った。
もしかしたらそう感じた原因はどこかにあったのかもしれないが、面倒になってきたので考えるのはそこで止めた。
欲しい答えが見つかればひとまずそれでいい。彼が目の前にいてくれるんだからそれだけで。
「なあ、アトリ」
「ん?」
「城の屋上に行かないか? 眺めも風も最高だぜ」
「うん、いいね」
聞こうかどうしようか迷って結局止めた。もし本当にここに休憩をしに来たのだとしたら、自分の役割はきっと尋ねることじゃない。
2人で思うように時間を過ごせば、それでいいんだ。きっと。
—
アトリにとって、団長さんといる時間が癒しであればいいなあ。という話。
団長さんの察しがよくていいのか迷ったんですが…まあこんな感じで。
(ゲーム中でも良かったり悪かったりするから解釈に困る)
09.6.1