「ちょっと遊んでいかないかい?」
ロックランドに着いてすぐ、宿の前で少年が声をかけてきた。
彼の足元には小さなコップが3つ、伏せるように置かれている。
「具体的にはどうやって?」
ちらりとグレミオたちを見てから、リュウは彼の元へと駆け寄った。
連れの3人はこっそり抜けたリュウには気付かず、話しながら宿へと入っていく。
「ちょっとしたゲームだよ。まずコインを1枚コップの下に隠す。で、このコップ3つを動かした後、コインがどこに入ってるか当てるんだ」
少年が実際にコインとコップを動かしながら説明してくれる。
リュウはふうんと頷きながら、「で、何賭けんの?」と首を傾げた。
ルールは単純だし、ちょっとやってみたい。
「話が早いね、もちろんお金だよ」
――と、少年はにいと笑った。
「100ポッチでも、1000ポッチでも、10000ポッチでもいいよ」
お金なんて逃げる時にほとんど家に置いてきてしまったから、手持ちは1760ポッチしかない。
賭け事なんてスリルを楽しむものだろうに、これだけでは賭けた気になれやしない。
とはいえ、今日の宿代も必要だし――ううむ。
やや迷ったが、リュウはぽいと財布を投げた。
「オッケー、じゃあ1700ポッチ賭ける」
「何やってるんですか坊っちゃん!!!!!」
――が、布袋が頂上まで飛びきる前に、それは後ろから伸びた手にとって奪われてしまった。
あっちゃあと思いながら恐る恐る振り返ると、グレミオとクレオが揃って仁王立ちをしてこちらを見下ろしている。
二人の濃い影が落ちてきて、リュウはわずかに身を引いた。
「賭け事なんてグレミオは許しませんよ!」
「しかも財布投げるなんて一体何を考えてるんですか。いいですか坊っちゃん、これは坊っちゃんだけのお金ではなくて、私達で使うお金なんですよ」
全財産賭けたって、勝てば何の問題もないんじゃないか――とリュウはこっそり思ったが、そのまま口答えすると確実に怒られそうだったので、口を尖らせながらそっぽを向いた。
「負けたら負けたで、その辺でモンスター退治で稼いで来んじゃん」
「そんな危険なこと許せるわけないでしょう!!!」
「そういう問題ではありません!!!!」
途端に拳骨が2つ降ってきて、目の奥で星が散った。