04 どうあっても不安でしかたなくて

空を見ていた。瘴気が取り払われ、真っ青に澄み渡った空を。どこまでも高いその色は、ずいぶん前には当たり前だと思っていた。けれど、その透明さに泣きたくなるのはどうしてだろう。
 
 
「ルーク」
 
 
名を呼ばれて振り返る。ガイはどうしたと優しい顔で笑って隣に並んだ。
 
 
「ルークが帰って来ないって皆ご立腹だぞ」
「あ……ああ、ごめん。今戻るよ」
 
 
そういえば迎えに来てくれるのはいつもガイのような気がする。昔、外に出たいと駄々をこねて屋敷の中に隠れたときも、アクゼリウスの一件の後も。いつだって彼は迎えに来てくれた。
 
 
「よし、じゃあ戻るか」
 
そう歩き出した彼の服を思わず掴むと、ガイは不思議そうに振り返る。どうしたと言われて我に返り、急に恥ずかしくなってしまった。
 
 
「あ、ご、ごめん。何でもない」
「?」
 
 
置いていかれるような気がしたわけではなくて。ただ――……どうしても不安で仕方がないのだ。レムの塔で瘴気を中和したとき、自分の手が透けて見えた。もうすぐあのときのように体が透けて最後には消えてしまうのだと、思うと。
 
 
 
「ったく、しゃーねえなあ。子供かお前は」
 
 
 
服を掴んでいた指をゆっくりとほどかれ、ルークは「何だよ子供って」とそっぽを向く。離された代わりに軽く握られた手。きょとんとして顔を上げると、ガイは困ったように笑った。
 
 
「服持たれたら歩きにくいだろ?」
「え、あ、うん!」
 
 
 
先を歩くガイの後ろを手を引かれて歩く。昔を思い出して何となく苦笑した。
 
 
 
 
 
このままずっと、手を握っていて欲しい。
自分が消えてしまわぬように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2006.1.4 // 死ぬのは怖くて。とても、とても怖くて。