05 忘れてしまった遠い日の

「俺はガイに助けられてばっかだな」
 
 
そうか?と聞いたらそうだよと返事が返ってきた。いろいろと思い返してみるとそのような気もしなくはないが、けれど助けてばかりということもない。戦闘中も含めて逆に救われたことも何度もある。
 
 
「つーことでお返ししたいんだけど何がいい?」
「それを本人に聞いてどうすんだ。……いいよお返しなんか、もう十分もらってる」
「えっ俺何かあげたか?」
「ま、いろいろとな」
 
 
形のあるものもないものも、両方たくさんもらっている。ルークは気付いていないのかもしれないけれど。たとえば陽に映える眩しいくらいの笑顔とか、たとえば退屈しない日々とか、たとえば何気ない言葉とか。
 
 
「前に言ったろ。お前がくれた言葉――『過去ばっか見てても前に進めない。だからいらない』って。あれがあるから今の俺があるっつっても過言じゃないんだぜ?」
「そう……なのか?」
「ああ」
 
 
居心地のいい日々と、忘れられない過去の憎しみ。板挟みになっていた自分を救ってくれた言葉。吹っ切ることができたわけではないけれど、その言葉のおかげで今を――ルークと共にある日々を、見つめることができた。前向きに生きようと思えた。
 
 
「でも俺、覚えてねーのに」
「そんなもんだろ。したことよりしてもらったことの方がよく覚えてるもんさ」
 
 
そうかなと納得いかない様子のルークに、ガイはだから気にすんなと笑ってやった。ルークは忘れてしまった遠い日の記憶に思いを馳せながら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2006.1.6 // どちらかだけが手を差し伸べる関係じゃなく、互いに支え合える関係であってほしい。