06 まぶたを閉じたその先に

「うおすっげ雪!真っ白!」
「ルーク、はしゃいで転ばないでね」
「おわっ」
「はぁ……言わんこっちゃないですわ……」
「ないですの-」
 
 
ケテルブルクは雪に覆われた街だ。建物も地面も樹木すらも白に染まり、見渡すかぎりの銀世界。日の光を受けてきらきらと輝く雪景色にはルークでなくとも心が踊る。バチカルは暖かい気候だから雪などめったにお目にかかれるものではく、しかもこれだけ積もった景色というのはルークにとっては珍しいのだろう。
 
 
「ひー冷てぇ。息が白いぜ」
「当たり前です」
「おいルーク、そんな格好じゃ風邪引くぞ。何か着ろ」
「へーきへーき、ほら行こうぜ!」
「うー、見てるこっちが寒いよ……」
 
 
まるで子供のようにはしゃぐルークに、ガイは目を細めた。そういえば昔「雪を降らせろ」などという駄々をこねられて困ったことを思い出す。降らせてやりたいものの天候をどうにかできるものではなく、かき氷を作って食べるということでなだめすかした。
 
 
広場では子供たちが雪合戦を楽しんでいる。雪を投げる遊具もあるのかと感心したら「ああ昔私が作ったんですよ」と大佐に言われて驚いた。彼でも雪合戦をした頃があるのか。
 
 
「妹や陛下が雪合戦の相手をしろとうるさかったもので、私の代わりに雪を作って投げてくれるものが欲しかったんです」
「……」
しかし大佐は大佐だった。
 
 
暖かいバチカルだが、全く降らないかといえばそういうわけでもなく、1度か2度は積もったことがある。その時はルークが疲れるまで雪遊びに付き合わされた。疲れ知らずのルークにそろそろ勘弁してくれと思わないでもなかったが楽しかったのも事実だ。
 
 
「隙ありっ」
「おわっ」
 
 
冷たいものが顔の側面に当たり、凍り付くような空気に冷えきった耳がさらに冷える。視線を向ければ勝ち誇ったような笑みを浮かべたルークが雪玉を手の上で遊ばせていた。この野郎とガイも笑い、足元から雪をすくって投げつける。
 
 
「待て腹を狙うの禁止!」
「そんな格好してるお前が悪い」
「だったら俺は顔面狙うからな!」
「それ言ったら意味ないだろ」
 
 
ひょいとよけたら後ろにいたナタリアに当たり、非難の声が上がった。2つ目を避けると次はアニスに。
 
 
「くぉらガイ!よけんな当たるじゃん!」
「そ、そんなこと言われても」
「お返しですわ!」
 
 
弓の名手だけあって(関係ないかもしれないが)ナタリアのコントロールはよく、雪玉はルークの顔面にヒットする。よしあたしもとアニスもルークを狙い、3対1は卑怯だろとルークが吠えた。
 
「はぁ……子供ばかりね」
「そうですねー。若い人たちは放っておいて私たちは暖かい部屋でゆっくりさせてもらいますか」
「み、ミュウはご主人様の味方をするですの!」
 
 
だったらそいつら引き止めろとルークが言い、ミュウは二人の前に立ちはだかる。可愛いものに目がないらしいティアは固まったように動かなくなったがジェイドはそういうわけにもいかない。
 
 
「皆、ジェイドを狙え!」
「はいよ」
「言われなくてもわかってますわ!」
「一人だけ逃げようったってそうはいかないもんね!」
 
 
光にきらめく雪の中、時間を忘れて体を動かす。とても懐かしい気がしてまぶたを閉じたら、その先には古い記憶が見えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2006.1.8 // めったに降らないので雪が好きです。