07 途切れてしまった音楽のように

「アッシュってルークに冷たいよねー」
「そうかもな」
 
 
去りぎわ体の小さなアニスという少女に言われ、ガイに同意された。それがどうしたとアッシュは無視することにする。自分から陽だまりを奪ったレプリカ。自分と同じ顔もあの性格も気に食わない。優しくしろという方が無理だ。
 
 
「案外あれかも。ルークのこと好きなんじゃない?」
「ああ、好きな相手をいじめたくなるというあれですね」
「なっ、んなわけあるか!!」
 
 
思わず声を荒らげて勢いよく振り返ってしまい、しかもう声が裏返ってしまい、しんとその場が静まり返った。フォニムの光と音だけがゆるやかに流れ、揺れる。小柄な少女と眼鏡の青年がにやりと笑ったのが見えた。かあと頬に赤みが差す。
 
 
「あーっ、ひょっとしなくても図星ぃ~?」
「まったく素直じゃありませんねえ」
「ち、違うっ!誰がこんなレプリカを」
 
 
差した指がルークの方を向き、目が合ってしまって言葉が続かない。困ったように目をきょとんとさせる彼にどきりとする。なぜだか明るい春の空を思い出した。静かで優しい、心を落ち着かせるいろ。
 
 
「おっと詰まったよ大佐!」
「こらこらアニス、あまりからかってはいけませんよ。秘めたる想いでしょうから」
「あんた楽しんでるだろ」
「ええ、そりゃあもう」
「え、えっと、アッシュ……?」
 
 
誤解だと声を大にして叫びたかったのだが、途切れてしまった音楽のように止まったまま言葉が出てこない。レプリカお前魔法か何か使ったろ。じっとこちらを見てくる視線にとても居心地の悪い気分になる。
 
 
「――っ、帰る!」
 
 
ようやくそれだけ言ってアッシュは身を翻した。後ろであっ逃げたとか可愛いところありますねえとか聞こえたがすべて黙殺する。顔が熱くてたまらないのはどうしてだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2006.1.6 // アシュナタもアシュルクもどちらも大好きです。