カナリア*

Want to Escape

群島生まれの少年は困っていた。いや、途方にくれていたと言ってもいい。場所はグレッグミンスターのマクドール邸2階、家主の部屋。カインはテッドとその親友からじっと半分にらむように見つめられ、一体どうしたものかと内心非常に困惑していた。
 
たまに、二人のノリについていけない。
 
 
 
「だからさ、決めろって」
「テッドと俺と、お前はどっちなわけ?」
 
その問いは、すでに2度目になる。
 
 
テッドかリュウか、どうしてどちらかを選ぶような話になっているのだろう。
カインとしては正直、どっちでも、いい。
 
このタイミングでリュウの部屋の戸をノックしてしまったことを心から悔やんだ。いや、カインが来なかったら来なかったで彼らの方から出てきたかもしれないのだが――。とりあえずため息をつきながら正直なところを告げてみる。
 
「……どっちでもいいよ」
「その返事はなし!」
「ちゃんと選べ!!」
 
二人はほぼ同時に否定した。ぴったり声を上げるタイミングを合わせられるなら、争ったりせず仲良くしていてくれればいいのに。そんなことを考えていたら、テッドがすすすとカインの横手に回り、ぽんと肩を叩いてきた。
 
 
「なあカイン、俺とお前は長い付き合いじゃないか。何度もお前の世話になったが、俺だって多少は助けてやったろ? つーわけで俺を選べ。一生のお願いだよ、なっ?」
 
そんなこと言われても――。カインが困惑の視線をテッドに向けたら、「何言ってんだよ!」とリュウが逆側の腕をがっしりと掴んできた。
 
「付き合いの深さは時間じゃねえだろ! 選ぶなら俺にしとけ、絶対損はさせねえぜ。そりゃテッドに比べりゃ会ったばっかだけどさ、初めて会ったときからビビっと来るもんがあったろ?」
 
それは単に真の紋章同士が反応しただけだ。今度はリュウの方を見れば、肯定するまで絶対に離さないという目でじっとこちらを見上げている。テッドはがっしり肩を掴んでくるし、リュウは腕を離してくれそうにないし、なんかもう本当に――
 
 
逃げたい。
 
 
「いや、だから僕は本当にどっちでも」
「どっちもじゃ駄目なんだ!」
「そうだ俺かテッドか、どっちがいいんだお前は!」
 
左右から二人に問い詰められ、カインは一歩後ろに下がった。しかしカインが動くと二人も一緒についてくる。選べと言われても、カインは心底どっちでもいい。テッドとリュウは互いの視線を交わらせて火花を散らした。
 
「俺! 年寄りは大事にしろ!」
「いーや俺! 大人なら謙虚になれ!」
 
どちらも引く様子はない。このまま放っておけば掴み合いのけんかにさえなりそうな雰囲気をまとっている。じゃんけんでもすればと言った程度では収まらないかもしれない。
 
二人が争っている理由、それは実にくだらない。
 
 
 
 
「今晩はハヤシライスに決まってんだろ!!」
「いいや!! 絶対カレーライス!!!」
 
 
 
 
夕食のメニューなど、どっちでもいい。
 
これから買い物に行くのはカインなので、メニューを左右できるのは確かなのだけれど。そんなどうでもいい喧嘩に巻き込まないで欲しい……と、カインは遠い目をしながら思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

talk

 
リク企画の……というつもりで書いたら取り合う人物間違えてたんですけど……。
坊とテッドと4主ってすごく素敵な組み合わせですよね(ごまかし)。
 
 
2007.9.30

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