09 涙が出るくらい綺麗すぎた空に

ここで消えるのだと思った。
 
たくさんのレプリカ達と一緒に死ぬのだと。その覚悟はしたはずで、決心はしたはずだった。けれどやっぱり消えるのは怖くて、恐くて怖くてたまらなくて、死ぬのは嫌だと剣のつかを握りながら心の中で何度も叫んだ。もう会えなくなるだろう大切な人たちの名を、呼んだ。
 
 
「ルーク!」
 
 
再び目を開けたときに視界に入ってきたのは懐かしい青い空。澄んだ水色が広がり、雲は真っ白に染まっている。鳥が数羽飛ぶ突き抜けるような青空がとても綺麗だ、と思った。空は、世界は、こんなにも。
 
 
「ルーク、大丈夫?」
「私たちが誰かわかります?」
「あ――うん。大丈夫。俺……生きてる……?」
 
 
どうしてだとかそんなことはどうでもよくて、ただ安堵した。生きている、その単純な喜びを噛み締めた。まだ自分はここにいる。ここにいて、仲間に触れることができる。話すことができる。息をしている。生きて、いる――……
 
 
「やったじゃん!ルークってばしーぶとーい」
「まあ、ルークですからね」
「よ、よか――俺……」
 
 
うまく言葉にならない。声がかすれる。この気持ちを、この喜びを、何といっていいのか分からない。
 
 
涙で視界が歪む。その中で揺れるのは泣きたいくらい綺麗な空と、仲間達の笑顔だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2006.1.8 // 喜びを表現するって難しい。